Fumiko’s Second Life

2008年に脱サラした主婦が開業して店を始めるまで〜始めてからの約2年間の記録

「What a Wonderful World」

金曜日に綾戸智恵デビュー10周年記念ツアー"FINAL"の初日に行ってきた。

息子が0歳の頃、地元にコンサートに来るという告知を見て、
当時「最もチケットの買えないアーチスト」という異名が付けられていた綾戸さんを見れる!?と
小躍りしたが、「未就学児の入場はお断りします」の文字に、「そりゃそうだよなぁ」と断念。

翌年、レコード会社に復職した私は、コンサートに行くどころではない毎日が始まり、
1999年に発売された『life』、2000年に発売された『natural』の2枚のアルバムは、
CDを自ら買うことが少なくなっていた私が買った、数少ないCDだった。

あれから10年。綾戸さんはデビュー10周年を迎えられ、息子は10歳になった。
そして、念願の初ライブ体験は綾戸智恵デビュー10周年記念ツアー"FINAL"
今年、サラリーマン人生に一区切りをつけた私にとって、是非とも見ておきたいコンサートだった。

根強いファンに支えられながらも、メディアでは「あのよくしゃべるオバハン」的なイメージが定着していたので、
綾戸智恵のファンだという友人は身近にいなかった。
しかし、チケットはなんとなく2枚取っていた。
ギリギリまで一緒に行く相手が見つからなかったが、
直前になって、今度一緒にバンドを組むことになった森綾さんをお誘いしてみたら、
うまいことスケジュールが合い、一緒に行けることになった。

こうしてようやく見ることができた綾戸さんのコンサート。
ビリー・ジョエルの「New York State of Mind」
ナット・キング・コールチャック・ベリーを始め、数々のアーチストにカヴァーされた「Route 66」、
綾戸さんが大好きだと言うレイ・チャールズ「Georgia On My Mind」
紅白でも歌った名曲「Tennessee Waltz」など、
次々と繰り広げられる楽曲で、アメリカのあちこちの風景を描いてくれた。

スタンダードナンバーの数々(時にはJ-popsまで)を英語で歌い続けてきた綾戸さんが初めて書いたオリジナルで、
息子さんに突然「なぜ、僕はママの子なの?」と問いかけられたことでできあがった「Get Into My Life」『natural』に収録)が曲紹介され、
あ、この曲はヤバい、と内心思ったものの、前向きな曲調と力強い歌いっぷりに、
心があったかくなった。

一番印象に残ったのは、かの有名な「What a Wonderful World」。
綾戸さんが幼少の頃に、「サッチモっておっちゃんが歌うてるの聴いて、英語なんかよくわかんなくても、
I see trees of green, red roses too
木ぃが緑。赤いバラ。
I see skies of blue, and clouds of white
青い空。白い雲。
The colors of the rainbow, so pretty in the sky
虹の色。とってもキレイ。
I hear babies cryin', I watch them grow
赤ちゃんが泣いてる。育って行くのを見てる。
・・・なんとなく心でわかって聴いてたんやと思います」というエピソードと、
自分は英語で歌を歌って来たが、皆さんはそれを心で聴いてくれてくれはる、
というようなことを話し、歌った「What a Wonderful World」。
そう言えば、あまりにもスタンダードすぎて、改めて歌の意味なんて、考えたことはなかった。
改めて歌詞に耳を澄ませて聴いた。

最後の1コーラス、
I hear babies cryin', I watch them grow
They'll learn much more, than I'll ever know
And I think to myself, what a wonderful world
で、涙が溢れてきた。

あっとういう間の10年。いろんな人に出会った10年。なんて素晴らしい世界。

また、綾戸さんは、「ええ歌はどうとでも取れる。それでええと思うんです」と言った。
「What a Wonderful World」は脳天気な歌にも聞こえるし、
人生の重みを教えてくれる歌でもあり、
それを聴いた時によって、全く違う気持ちで聞こえてくる曲だと思う。

アルバム『life』の表題曲でもあり、
今回のコンサートでも披露してくれた「For Once in My Life」もそんな曲だった。

「人生に一度でいいから、誰かに『あなたが必要』と言われたい。ええ歌詞やないの。」と
綾戸さんのセルフライナーノーツにもあるが、
シナトラが歌うとものすごくロマンチックな曲に聞こえるのだけれど、
綾戸さんが歌うのを聴いていたら、"For once in my life I've got someone who needs me" は
「人生に一回だけじゃなくって、何度だって誰かに『あなたが必要』と言われたい」
と歌っているように聞こえた。なんとなく。
「みんながこうして来てくれたから、10年も歌ってこれた」と綾戸さんは言っていた。
そうやって人に求められることは、綾戸さんの人生にとってどんなに大切なことだったか。
誰の人生にとっても、人に必要とされたいという欲求がない人はいないと思う。
だから人との出会いはありがたいと思うし、
人に声をかけてもらったり誘ってもらえることは、何はともあれ嬉しいことなのだ。

この10年間のまんなかへんで出会った綾さんと3カ月前に再会してから、
こうして何度かライブをご一緒したり、一緒にバンドを組ませてもらうことになったり、
誘っていただいたGREEで知り合った方々からまた声をかけていただいたり・・・という
onceどころか"For many times in my life I've got someone who needs me"な
「What a Wonderful World」。
家族に必要とされ、友人に必要とされることの喜び。
元同僚や元上司、元仕事相手から突然やってくるメールや電話。
私を思い出して声をかけてもらえることに感謝。

話は綾戸さんに戻る。
"FINAL"と銘打たれている通り、綾戸さんはこのツアーを一区切りにして、
ツアー活動を休止するとのこと。
その理由の一つに、3年前に脳梗塞で倒れた母親の介護があるそうだ。
綾戸さんにとって、音楽の楽しさを与えてくれ、好きなことをやらせてくれた母親が
まさに今、"someone who needs me" だと確信し、そばにいることを決めたのだろう。

今日、7月27日(日)で最終公演を迎えるこのツアー、
国際フォーラムでの3日間は毎日少しずつ演目が変わると綾戸さんが言っていたが、
さすがに毎日は通えない。
しかし、最終日の模様がWOWOWで8月29日に放送されるとのこと。
忘れずにエアチェックして、綾戸さんに「お疲れ様」を言いたい。