Fumiko’s Second Life

2008年に脱サラした主婦が開業して店を始めるまで〜始めてからの約2年間の記録

『本日休診』三國連太郎×品田雄吉トークショー@東京国際映画祭

土曜日から始まった、第21回東京国際映画祭
今年で15回目を数える「ニッポン・シネマ・クラシック」部門では
本日より22日(水)までの4日間で7作品が上映されるが、
そのオープニングを飾った『本日休診』(監督:澁谷 實、1952年作品)を観に行って来た。

モノクロ時代の日本映画はほとんど見たことがなく、
名作と言われるいくつかの作品は見ておかないと日本人として恥ずかしい、と常々思っていたが、
何から見たらいいものかと思ううちに月日が流れていた。
今回、ル・シネマに足を運んだのも、「ニッポン・シネマ・クラシック」の運営を担当している
村上典吏子さんからのお誘いがあったことがきっかけで、
本日休診』のトークショーのゲストに85歳の現役俳優である三國連太郎さんがいらっしゃる、という話を聞きつけ、
滅多にない機会だし、このような機会でもなければ、日本映画の世界を遡る旅に出るのは、
また先延ばしになっていただろう。

本日休診』は1951年にデビューした三國さんにとって、3作目ぐらいの作品だったそうで、
当時既に国民的スターだった鶴田浩二さんがやるはずだった役を、
たまたまスタジオ見学に来ていた三國さんを見かけた澁谷監督が「彼に変えよう」と言い出して、
急遽出演することになったというエピソードを披露してくださった。
監督は兵役帰りだった三國さんの方が、軍隊生活の後遺症で発作を起こす勇作役にぴったりだと判断したのだろう。

澁谷 實監督は、気に入った役者しか使わなかったそうで、本作も昭和を代表する映画スターが大勢出演しているが、
そんな経緯で作品に起用された三國さんのことを鶴田浩二さんは快く思わなかったようで、
「以来、撮影所などで顔を合わせても、生涯口を聞いてくれなかった」のだそうだ。

そんなお話をにこやかに話される三國さんは、『釣りバカ日誌』のスーさんに代表される近年のイメージと反して、
時に毒のある本音トークを聞かせてくださり、会場に松竹などの業界関係者が多数いらっしゃることを意識しながらも、
その柔らかな口調と対照的な辛口トークの数々が意外で、非常に興味深かった。

二枚目役ばかり演じていた鶴田浩二さんと異なり、悪役もやれば色魔も演じる、といった役柄の広さに話が及び、
そこが三國さんの凄いところである、と聞き手役の品田雄吉さんはすっかり「一映画ファンモード」で
上映作品以外の話題に及び、日本を代表する映画評論家といった風情はそこにはほとんど無かったほど(笑)
まだ『釣りバカ』シリーズの次回作の構想はあるらしいのだが、
「あんまり好々爺ばかり演じてもねぇ(笑)」
「あと1本作るとかいう話はあるらしいけど、私にお声がかかるかどうかはわかりませんから(笑)」などと、
関係者をヒヤヒヤさせるような発言が聞けたのも、ル・シネマという小さめの劇場で行われた、
クローズドなイベントだったからだと思うが、数々の発言の中から、
「スーさんのような『いい人』じゃなくて、もっと面白い役をやってくれと言ってくる、
若くて骨のある演出家が出てこない今の日本映画界はつまらん!」と仰っているように感じられた。

そして、数年来脚本作りに勤しみ、なかなかの難産であるように仰っていた監督としての次回作についても、
是非完成させたい、と意欲を見せる85歳の三國さんは、映画界の訃報が続く中で、
自分より11歳年上の現役監督もいるのだから、それに比べればまだまだ小僧だ、と謙遜されるのだった。

21日に「ニッポン・シネマ・クラシック」で上映される『昭和残侠伝』のトークゲストである池部 良さんは、
90歳の現役俳優。
上映作品こそ1965年の作品だが、そのキャリアは1941年から、という戦前・戦中派。

最近、昭和のテレビ草創期の企画マンだった父の雑記を整理してブログ化したり、
父の先輩で仕事仲間だった五社英雄さんの愛娘・巴さんの著した「さよならだけが人生さ―五社英雄という生き方」を読み、
壮絶な五社一家の逸話に衝撃を覚えながら五社作品を改めて観直したいと思ったり、
にわかに昭和再発見のマイブームが起きている私だが、
この「ニッポン・シネマ・クラシック」を通じてどんどん年代が遡り、
観なければならない作品だらけである。
さすがに「ニッポン・シネマ・クラシック」を制覇することはスケジュール的に難しいが、
21日は池部さんからどんなお話が聞けるのかを楽しみに、またル・シネマに足を運ぶ予定だ。